白と黒の城の話。

そのうちいい思い出に変わるよ、なんていう。

んなわけない。いい思い出はずっといいままだし、

嫌な思い出はずっといやなままだ。

それでいいのに、だからいいのに。

いちいち嫌なことなんておもいださなくなるだけ。

不安で小さくなっている彼女に、前向きな説教という自慢話をする奴は大嫌い。

ずっと前に、彼氏がいないと悩んでるかわいこちゃんに、

じゃあ紹介してあげるよ~前向きに恋しなきゃダメだよ~

なんつっててめぇに惚れてる男紹介して

目の前でいい気になってみせびらかしにまできた女がいて、

そんでかわいこちゃんはいいこなもんだからだまってさえない笑顔うかべてて、

その顔はそれはそれでかわいいから萌え~ってやつなんだけど、

そんなこんなの様子みせられたもんだからもうおいらったらマジギレ。

うらやましくないんだよ!そのクソ男もろとも消えちまいな阿婆擦れ!

嫉妬してんじゃねぇ無礼者~!さがれ!そんなに寂しいなら端から抱いてやるぞ、かかってこい!ギーギー!

まぁまぁまぁなんてツヤ子さん部外者ですからなんて皆になだめられちゃっていつでもめんどくさいのはこの私だ。

 

いつかいい思い出に変わらずに思い出しちゃったじゃないか。フン。

 

優しい人に会う為に、阿佐ヶ谷の遊歩道を歩いた。

やさしいひとに会いたかったけど、会えなかった。けど、まぁいい。

 

「恋したことないのねー」

萩尾先生の「城」という、漫画のせりふ。

最大限の嫌味を軽やかに吐く金髪美人の気分。

優しい人に会う為に、遊歩道を、歩いたからだ。