臼井的モテの謎。

臼井くんは、顔はちょっと平目っぽく、

お勉強は中の下で、運動もそんなに、不良ではなく、

特に目立った行動もしなかった。

美術部でもないし絵を描いたところを見たこともなかったけど、

美術のテストでかいた落花生が最高に上手かった。

文学部でもないし、ギターも弾かないし、特に読書家でもなかったようだが、

卒業文集の作文はピカイチおもしろかった。

上の段の子の、「ぼくの三年間」というまじめな文章をほぼパクって、語尾と結論だけ変えるスマートな手法だったと記憶している。

いかがわしい雑貨屋で一度遭遇したことがある。

「よう!」と声をかけられた。

わたしはこの人は魅力的な人、と認識した。

で、女にモテた。ひっそりと、でも確かに。大人数に。もう、ありとあらゆる種類の女に。

なぜ?

臼井的モテの法測から察するに、男女の別がないとすれば、私も相当数のモテを勝ち得ていたはずである。

凹凸のない時代の話だ。

わたしは気付かなかった。

臼井は気付いていただろうか。

ムフフ、眠ろう。