ゆで太郎さんの物語
元恋人は付き合っていた頃「魚河岸」という鮨屋に勤めていて、
わたしの周りの人たちに「魚河岸さん」とよばれていた。
先日連絡が来て、現在無職で相変わらず道に迷っているという。
職を探してやった。
「まずお前はこの「ゆで太郎」なるそば屋に就職する。
友人と久しぶりの再会をした際は、
「お前、今なにやってんの?」などと聞かれるであろうから、
「俺?麺ゆでてる。」とこたえるのだ。「そばを打っている。」などとまるでそば職人であるかのような虚勢をはるなよ。
周りの人たちからの愛称は「ゆで太郎さん」だ。
・・・それだけでは貯金が出来んな。
だから休日はこの「㈱ヨシ××」で塗装工助手のアルバイトをしたまえ。
お前と名前が同じ会社であるから、おまえはいよいよ本名で呼んでもらえるであろう。
そして社会的地位のはしくれを確立して調子にのったお前は若いお姉ちゃんに恋をする。
そしてわたしなど忘れておめおめと生き抜くのだ。」
「・・・お前の勝手に作った物語で嫌味を言われたくない。」
昔から別れた女の対応といえば無視か嫌味かの2択と相場は決まっている。人生設計を組み込んだちょっと笑える物語仕立てにしてやったんだ。
生きていかなきゃならんのだよ。
がんばれや。